ペンネーム:レベルダウン
私はこれまで少なくとも3回入院しました。そのうちの2回は精神病院です。一回目は鴨川で、肉体的にも精神的にも重症だったので、まずは、外科的な処置をしてもらいました。
入院中は、タバコも酒も飲めなくて苦痛でした。自分はちょっとだけ真面目なため、隠れて吸ったりはしません。入院した最初の頃は個室だったのですが、料金が高いのと人気が高いため、すぐに大部屋に移りました。大部屋では入れ替わり立ち代わり人が変わり、中には機械音が鳴る機器をつなげた重症の患者さんが入室してきたり、そういった事がとてもストレスでした。
テレビはカードを買って時間で見る方式でしたので、私はテレビを見ませんでした。せめてもの救いは、院内の図書館で本を借りる事でした。日常生活では本はほとんど読まなかったのですが、入院中はそれしか楽しみがない為、毎日のように本を借りました。
ある日、少し寝付けずにウトウトしていると廊下から「スタッドコール」(スタッフ用の緊急呼び出し)と夜中に鳴り響き、先生方スタッフのみなさんがなにやら駆け足でどこかへ向かっていったこともありました。外を見たら自分を担当している研修生の顔が見えました。そこで、何か問題が生じたのではないかと心配になりました。次の朝その研修生の顔は青白い感じがしました。看護師さんは、夜中であっても検温と酸素濃度を測りに来ました。
一カ月ほどで退院し、弟の知り合いの所で働く事になりました。そこの職場は早朝6時から9時まの短時間でしたが、機械を使った危険な作業もありました。作業内容を覚えてしまえば一人で作業をまかせてくれたので、自由に仕事ができ、何よりうれしいのはタバコを自由に吸えた事でした。とはいえ作業はとても大変で、時間内に一本しか吸えなかったです。
工場での作業も日数を重ね、慣れてきたちょうど二年目の頃で、仕事も掛け持ちでやっていて忙しく感じていました。家の事もいろいろあって精神的に参ってしまい、服薬をしていないこともあった為か、二度目の病気が再発してしまいました。今度は病気が発症している時に冷静になり、自分で救急車を呼んで処置をしてもらいましたが、そのまま入院する羽目になってしまいました。そういえば最初に入院した時に、次は隔離する事になると言われていた事を思い出しました。今度の病院では、保護室と言われる場所に隔離されました。数日間は外に出してもらえなかったのですが、ほどなく出られました。
今度は施設内の一階部分以外の場所には出てはいけない様でした。それでも、保護室の中から出られたのは救いでした。病院でお酒を飲めないのは当然ですが、タバコが吸えたのがせめてもの救いでした。ただしタバコは一時間に一回しか吸えませんでしたが、それでもヘビースモーカーの自分にとっては良かったです。お酒が飲めない分、食事がとても楽しみになり、体重は10㎏増えましたが健康的になりました。
病院内では、作業療法士の方が来て、作業療法というプログラムをしてくれて、いい暇つぶしになりました。仲良くなった患者さんもいたので、そこそこ入院生活は良かったのですが、やはり退院したい気持ちがとてもありました。 それから二カ月ほどで退院できたのですが、いざ退院してみると意外とやる事がなく、とても時間を無駄に過ごしてしまいました。仕事はあったのですが、間もなく工場閉鎖となり無職になってしまいました。
そんな中で海に行き、ビーチグラス(海辺に落ちているガラスの欠片)を拾って売り物にしようと試みたり、編み物を入院中に覚えたので、編み物を編んだりしていたのですが、あまり売れませんでした。編み物もそう長くは続かず、たまに編んだりするぐらいでした。
そんなこんなで3年が過ぎ、診察のとき先生から仕事をしたほうが良いと言われました。すぐに就労支援員をつけてくれて、今通っている「NPO法人なの花会」に通う事になりました。作業所はとても楽しく、有意義に利用させてもらっています。現在は再発もせず、5年が経過しています。この文は前に書いた記事とも関連しているので、「統合失調症と私」も時間がありましたら見てください。
現在、ビーチグラスを用いた作品も作っているので、その写真を載せたいと思います。これらの作品は、まずビーチグラス(シーグラス)と言われるものを、糸で包んで飾りたい所から始まり、その後試作を続けるうちに、「マクラメ編み」と言う、手で編む技法を用いて作りました。その後何度か繰り返して、ようやく形になったものです。マクラメ編みの技術は、ここの作業所の理事長の奥さんが、指導員と私に毎週火曜日に来て教えてくれています。基本をしっかり教えてもらい、デザインの案もいただきながら、現在のデザインになるまで、指導員の方に試作段階でも暖かく見守られながら、約一カ月ほどの期間を経て、ようやく形になりました。私はこの作品に用いているマクラメ編みの技術を高めていきたいと思っています。